スイスワインの概要

スイスで主だったワイン産地を大別すると、西から

A.スイス西部
 1.ジュネーブ州
 2.ヴォー州レマン湖岸地区
 3.ヴァリス州
 4.ヌーシャテルを中心とする湖岸地区
B.スイス南部
 5.ティチーノ州とグラウビュンデンのミゾ地区
C.スイス東部
 6.チューリッヒを中心とする東スイス地区
 7.その他諸州(主に地元消費)

となります。

スイスはフランス語圏の西部とドイツ語圏の東部、そしてイタリア語圏の南部でそれぞれ独特の特徴を持っています。

スイス西部のフランス語圏においてはフランスのブルゴーニュ、ジュラ地方と同様な品種が見受けられます。ピノ・ノワー、ガメイ、シャルドネ、アリゴテなどです。もともとスイスのフランス語圏はブルグンド族系でフランスのブルゴーニュ地方とつながりがあります。ワインの造りに関しては特にフランスのジュラ地区と共通性があります。

ところが、シャスラ・ブドウを使ってフルーティな白ワインを大量に産出しているのはスイス西部だけです。これが大きな特徴です。シャスラはスイスと隣接する一部のフランス・サヴォワ地区でしかその良さが発揮出来ないと言われています。

このシャスラはロワールのサンセール地方でも栽培されています。地域消費用のセカンドラベルとなっています。またスイスのソーヴィニョン・ブランの性格もサンセールに似ていて、シャスラと共にシーフードと良く合います。シャスラは特に刺身などの日本食と抜群の相性を持ちます。

スイス東部はフランスのアルザス地区やドイツのバーデン地区と同様の性格を持っています。赤ではピノ・ノワー、白ではドイツ最大育成種のミューラー・トゥールガウなどがスイス東部でも主流となっています。またアルザスの主要品種ともなっている、ゲヴュルツトラミネル、ピノ・グリも作られています。ミューラー・トゥールガウからは中甘口、ゲヴュルツトラミネル、ピノ・グリからは中辛から辛口まで作られています。赤のピノ・ノワーは主にフルーティに仕上げられています。これらはライン川流域のフランス、ドイツ、スイスの3国にまたがるライン・ワイン圏の共通性にも当たります。しかし、リースリングはほとんど栽培されていません。

スイス南部のティチーノとグラウビュンデンのミゾは主にメルロから作られる赤、ロゼ、白を作っています。ここのメルロで作られる良質の赤ワインは、むしろボルドー、ポムロールに近い骨格を有しています。イタリア語圏ですが、ワインの性格はむしろフランス的です。

スイスではローマ時代より植えられている大変古いブドウ品種なども栽培され続けており、これに品種改良が加えられたりして(例えば最近注目されているディオリノワーなど)、この小さな国土に何十種類ものブドウ品種が存在し、まるでブドウ品種のデパート的な様相を呈しています。

ワイン産出量別に見ると、産出量が多い州順に以下の通りとなっています
ヴァリス、ヴォー、ジュネーブ、ティチーノ、ヌーシャテル、チューリッヒ
シャフハウゼン、アールガウ、グラウビュンデン、トゥールガウ、ベルン
ザンクト・ガレン、フリブール、以上が年間百万リットル以上生産している州です。スイス全体では、年間およそ1億3千万リットルのワインが生産されています。
フランス語圏のスイス西部が全体の76%、ドイツ語圏のスイス東部が全体の17%、そしてスイス南部のイタリア語圏が全体の6%を産出しています。

<<スイスワイン地図>>


注)現在ヴァリス州は黒ブドウの生産が白ブドウを上回っており、ジュネーブは半々、
  ヴォー州においても約3割が黒ブドウとなっています。よって、ヴォー州はなんとか
  白の名産地に止まっていると言えますが、ジュネーブ、ヴァリスは赤・白の名産地
  に移行しています。サン・ガレン、シャフハウゼン、グラウビュンデンは約8割が
  黒ブドウとなっており、こちらはティチーノに続く赤の名産地に入ったと言えます。
  スイスワインも生活スタイルの変遷に合わせて変化しているのがわかります。

戻る