スイスでサイクリング−グラン・サン・ベルナール峠−
2008年8月3日

スイスアルプスの峠制覇、本番第二回目。グラン・サン・ベルナール峠。ここが今回挑戦の3つの峠の中で一番厳しい峠だ。サン・ベルナール峠の麓の町、マルティニィの標高は470m。グラン・サン・ベルナール峠の標高は2473m。その標高差2003m。距離47キロのアプローチ。果たして標高差2000mに耐えられるのか?大変緊張した。というか、半分やるのが嫌だった。だって苦しいに決まっているから。
なんで好きこのんでこんな苦しい挑戦をするのだろう?不思議だ。
ゴッタルド峠の挑戦時と同じく、朝5時起床。ベルン駅から電車の人となり、8時7分マルティニィ到着。8時10分過ぎに走り出した。

オルシエーレの村標高900m。この村まで電車が通っている。この先の谷間は行き止まりで、山道に変わる。その山道は標高2537mのフェルネ峠を越えてイタリアに通じている。

単独で聳える見事な山、ル・カトーニュ標高2598m

峠方向に見えた山。どの山かは特定出来なかった。方角的にモン・ヴェラン標高3731mかも知れない。だとしたら、富士山並の標高だ。

ブール・サン・ベルナール。標高1922m。ここに12時15分に到着。ここまでで、標高差1452mを稼ぐ。走行距離は40キロ。約4時間で到着。平均すると毎時360mのペースで登っている計算。休息もしているから、走っている時は毎時400m位のペースで登れていたのかも知れない。自動車道はここで峠道とトンネルに分かれる。写真の建造物がトンネルの入り口。トンネル入り口を交差する形で峠道が横切っている。まさに国境の長いトンネルなのだが、国境の長いトンネルを越えると、そこは・・・氷河の国アオスタ。実際景色はスイスと変わり映えがない。因みにトンネルは有料で4000円くらい取られる。自転車は通行不可。
実はここで急にお腹が痛くなり、大のトイレ休憩となった。30分の大休止。

ブール・サン・ベルナールにあるトゥールダム。マルティニィ寄り。マルティニィからだと、峠道の最後の町ブール・サン・ピエール標高1720mとブール・サン・ベルナールの間にある。サン・ピエールから道はトンネルとスノーシェードの連続となり、自転車にとってはちょっと辛い。といっても車にとって、冬は大活躍の設備のはずだが・・・。

ブール・サン・ベルナールを出発。峠まではあと7キロ、標高差550m。平均勾配8%の最後の急登。レッド・ブルでエナジー補給済。峠道の途中、2カ所にこの様な看板があった。因みに、「ロスピアーレ、標高2120m、峠まで約4キロ」との表示。これの他に峠まで2キロの表示があった。平均勾配が8%だと、実際は10%の急坂の連続となる。

峠は近し!綺麗な景色は撮影しなくちゃ、という理由で足を止める。いやぁ、写真撮影の有り難さが身にしみる。こんな所を登って来たんだぁ・・・。

スイスアルプスの美しさは、この過激な標高差にあるのだが、生身の体で向き合う自然としてはちょっと厳しいものがある・・・をしみじみ実感

到着! \(^o^)/
到着時刻14時10分。

そういえば、ゴッタルド峠にも午後2時10分に到着した。こちらの方が標高差があるので、多少脚力が向上しているみたいだ。それにしても、標高2000mを越えるときつい。息があがってくる。今回は水を沢山飲んだ。1.5リットルの水を飲み尽くし、沢の水を詰め込んだりしたので、2リットル以上は登る途中で飲んだことになる。沢の水は、雪解け水みたいでちょっと苦かった。飲んだ水はほとんど汗となったんだろうなぁ。

峠の湖。大きな池という表現もある。辞書で調べたら、水深5m以上ある大きな水域であれば湖と言えるらしい。あるかなぁ、水深5m。池と沼の違いも調べたら、どうやらどちらも水深5m以内の水溜まりで、水藻などが繁殖していると沼と呼ばれる様だ。因みに、この池(水深5mはなさそうなので・・・)の反対側はイタリア。イタリア側の方が、景色が素晴らしい。

山ってのは岩の塊なんだね。昔は、土が盛り上がって山が出来ていると思っていた。
写真に写っている二つの大きな建物は、実はスイス側の国境検問所と、イタリア側の国境検問所の間にある。国境の真空地帯だ。

スイス側にある由緒正しいオスピス。今でも宿泊出来る。冬でも泊まれるらしい。10月には道路が閉鎖されるのだが・・・。歩いてやって来る人がいるのだろうか・・・。

イタリア側の峠道。アオスタ州の州都アオスタ(そのまんまじゃん・・・)に通じている。こちらの道の方が、アルプスの峠道、といった山道の雰囲気を色濃く出している。というか、イタリア側の道はぼろい(イタリアの皆さん、ごめんなさい)。
パスポートを持って来ていなかったのだが、国境の真空地帯へは、遊歩道を伝って入ることが出来る。つーか、そのまま遊歩道を伝えば、イタリア側に降りられる訳で、これを密入国というのだろうか???

アオスタ側のアルプス。ここも厳しい所だ。イタリアのスイス国境地帯はヨーロッパ・アルプスの一部を担っているので、景色はスイスに似ている。特にアオスタはモンブラン(モンテ・ビアンコ)を頂点とする氷河谷に形成された地域なので、イタリアにあって、特に特異な地域だろう。イタリアといえば、かんたーれ!あもーれ!ってな感じが強いが、ここでは、ペーターやアルムじいさんが出てきそうだ。

いた! セント・バーナード犬。雪渓を駈け降りている。峠の救助犬として活躍したセント・バーナード。この峠の名前が犬の名前となった。これは英語読みで、サン・ベルナールはフランス語読み。何故、イタリア国境にあってイタリア語読みではないかというと、実はアオスタ州にはアオスタ語というのがあって、これはフランス語方言なんだそうだ。ここはスイスとイタリアの国境地帯だが、言語的にはフランス語圏という訳。
とはいえ、峠で会った人にはイタリア語を話す人が多かった。因みに峠のスイス側地域は、フランス語圏となっている。

いた! セント・バーナード犬。動かないやつ。しかもうじゃうじゃいた。

今回はスイス側のマルティニィから登って、スイス側に再び降りて、マルティニィに戻った。というのは、アオスタに下るとスイスに戻るのがとても大変なのだ。泊まりがけになってしまう。同じ道を往復したわけだが、登る時と、下る時では見える景色が違う・・・。まぁ、向いている方向が違うから当然なのだが、下りでみる景色の方が心なしか明るい。笑

マルティニィに戻る。しかし、峠で見た景色と、ここと変わり映えしない様な気が・・・。こちらはヴァリス州のローヌ谷にあたる。やはり氷河谷のひとつ。山々は2000mから3000m級。景色が変わり映えしないのも当然といえば当然か・・・。写真に見える山は、サン・ベルナール峠より高い。

グラン・サン・ベルナール峠のアプローチは、道としては整備されており、とても走りやすい。私のようなツーリング車で峠を目指している人より、レーサーで走る人の方が多い。しかし、幹線道路でもあるので、交通量が多く、ちょっと気を使うコースだ。
登り6時間かかったコースを下りはたったの1時間半だた。下りは登りの4倍も短い。昔、ちゃきちゃきのサイクリストだった頃、世の中に坂道というのは、登り坂が下り坂の3倍くらいある、と冗談交じりに話していたが、今回それが4倍に達してしまった。

マルティニィから電車の人となり、今回もゴッタルド峠制覇に続き乾杯のビールを1本飲む。これが結構効く。ワイン好きで、しっかりマルティニィ産の地ワインも買ってはいるが、峠越えの後はビールが恋しい。雪解け水より苦い味だが、うまい。